存在理由と深海の生き物

なぜ 人間だけが
自分は無意味などと思うのだろう

深い海の底を覗けば
何のために生きているのか分からないような
生物がごまんといる
誰に知られることなく
息づいているような生き物が

その一つ一つが
何のために生きているのかと疑いだせば
生命(いのち)なんて
この世からすべて死に絶えてしまうだろう

噴き上げる熱水の側で
硫化水素の中で
彼らは生きるために
生きる

人間だけが生を疑い
自らを無意味と思う

こんな海の底にも
生きている命があるのだけれど

クラゲ ~月に生まれ変わる~

クラゲは死ぬと
黄色い月に生まれ変わるらしい

二十八夜ごとに
一匹ずつ
新しい生命をもらって
海の底から立ち昇るそうだ

だけど 
そこにも 
ちゃんと一生があって
新たに生まれた月も
十五夜を過ぎれば欠け始め
二十七夜には回帰の月になって
夜の闇に消えてゆく

そうして月の一生を終えたクラゲは
再び海に落ちて
卵に生まれ変わる

もう一度 
生きるために
光より透き通った
身体をもらうんだよ

この記事を書いた人

石田朋子

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。科学番組の全盛期に子供時代を過ごした影響でSFを書いています。モットーは『Newtonから月刊ムー』まで。文芸とサイエンスを融合した新しいスタイルの作品を手掛けています。

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